内分泌疾患(ホルモンの病気)

内分泌疾患(ホルモンの病気)

ホルモンは体の様々な機能の調節に重要な働きをしています。ホルモンを作っている主な臓器には、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、精巣、卵巣などがあります。

脳下垂体

脳下垂体は脳の中心付近にあり、視床下部とともに全身のホルモン分泌の調節をしています。前葉、中葉、後葉の3つに分けられますが、おもに前葉、後葉のホルモンが疾患に大きく関係しています。

前葉は主に以下の6種類ホルモンを分泌しています。
・副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
・甲状腺刺激ホルモン(TSH)
・プロラクチン(PRL)
・黄体刺激ホルモン(LH)
・卵胞刺激ホルモン( FSH)
・成長ホルモン(GH)

後葉は主に以下の2種類のホルモンを分泌しています。
・抗利尿ホルモン(バソプレッシン、AVP)
・オキシトシン(OXT)

それぞれのホルモンは、脳腫瘍や薬剤の副作用、外傷や手術の後遺症など様々な原因のためホルモン分泌の過剰もしくは不足がおこることがあります。下垂体疾患の治療は原疾患の治療に加え、これらのホルモンの過剰および不足を調節し、できるだけ正常な体の機能の回復をめざします。ホルモンの調節のためには飲み薬もしくは注射薬が用いられます。

成人成長ホルモン分泌不全症

成長ホルモンは小児の成長に必要なものであることはよく知られておりますが、成人においても成長ホルモンは重要な働きをしていることが最近明らかにされてきました。成長ホルモンの分泌が不足すると、以下の症状がでてきます。
・疲れやすい
・やる気がでない
・体力がなくなったと感じる
・集中力が続かない
・すぐに落ち込んでしまう
・性欲が低下する
その他、コレステロールが上昇しやすくなり、内臓脂肪が蓄積しやすくなります。また、筋肉量が低下し、疲れやすくなります。
このような症状は成長ホルモン分泌不全でもおこることがありますが、下記に該当する方はその可能性が十分考えられるため、精密検査をおすすめいたします。

成長ホルモン分泌不全は以下のような方に起こりやすい病気です。
頭蓋内の疾患(炎症、脳腫瘍など)、頭部外傷、頭部手術、頭部の放射線治療後、出産時に大量出血したことのある方
子供の頃成長ホルモン分泌不全と診断を受け、治療を受けていた方。

上記のような症状が気になるときは一度精密検査をうけることをおすすめいたします。成長ホルモン分泌不全症については、重傷型と診断された場合に成長ホルモン治療が可能です。当院にて成長ホルモン治療可能です。気になる症状のある方は一度ご相談ください。

甲状腺

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副甲状腺

副甲状腺は甲状腺の裏側にある、ホルモンを分泌する臓器です。正常な状態では米粒くらいの大きさで、左右上下合計4つあります。カルシウム、リンを調節する副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌します。副甲状腺は腫瘍として大きくなり、副甲状腺ホルモンを過剰に産生することがあります。治療のため手術が必要となる場合があるため、副甲状腺だけでなく、カルシウム濃度、リン濃度、骨密度、腎機能、尿路結石の有無などについて総合的に考慮して治療方法を選択する必要があります。

副腎

副腎は腎臓のすぐ上にある臓器で、左右に1つずつ、合計2つあります。おもにステロイドホルモンとカテコラミンというホルモンを作っています。腫瘍が比較的できやすい臓器です。副腎にCT等の検査をきっかけに偶然みつかる腫瘍は副腎偶発腫と呼ばれ、ホルモンをつくらないものが大半ですが、一部にステロイドホルモン、カテコラミンなどを過剰に作り手術療法もしくは緊急治療が必要なものがあります。

アルドステロンというステロイドホルモンの一種を過剰に作っている腫瘍の場合、原発性アルドステロン症の可能性があります。原発性アルドステロン症は若年から高血圧となり、全身の血管および臓器の障害がでやすいことから、適切な診断のもと、手術療法、薬物療法など最適な治療法について慎重な検討が必要です。

ステロイドホルモンのうち、糖質コルチコイド(グルココルチコイド)という種類のホルモンを過剰に作る腫瘍は、高血圧、高血糖、低カリウム血症などの症状の他、顔がまるくなったり、手足が細いのにお腹に脂肪がたくさんつく独特の体型となったりします。このような状態をクッシング症候群といいます。クッシング症候群ではグルココルチコイドの過剰作用のため、ばい菌から体を守る免疫の作用が過剰に抑えられ、重傷感染症の危険が高く時に緊急治療が必要となります。

カテコラミンを過剰に作っている場合は褐色細胞腫の可能性があります。褐色細胞腫は非常に危険な高血圧発作を起こす可能性があり、さらにおよそ15%は悪性であることから、原則手術療法が必要となります。術後も悪性腫瘍である可能性がのこるため、慎重な経過観察が必要となります。

膵臓

膵臓は消化酵素の分泌の他、種々のホルモンを分泌しています。代表的なホルモンは血糖値をコントロールするインスリンです。膵臓の病気によりインスリン分泌が不足すると血糖値が上昇し、糖尿病になります。膵臓からインスリンが作られなくなるために糖尿病になる場合を1型糖尿病と呼びます。また、膵炎などの膵疾患、膵臓手術などのため高血糖となる場合を膵性糖尿病といいま。膵臓はときに腫瘍ができる場合があり、その一部はホルモンを産生することがあります。

精巣

精巣からは男性ホルモンが分泌されます。男性にも更年期症状と考えられる症状がみられ、LOH症候群といわれます。LOH症候群では以下の症状がみられます。
・性欲、勃起能の減退
・疲労感、抑うつ気分
・睡眠障害
・筋容量および筋力低下、除脂肪体重の減少
・内臓脂肪の増加
・体毛と皮膚の変化
・骨密度の減少、骨粗鬆症
診断は血中の男性ホルモン(遊離テストステロン濃度およびLH,FSH)の測定を行います。治療はテストステロン補充療法を行います。

卵巣

視床下部のLH,FSHによる調節のもと、卵巣ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を分泌します。これらのホルモンの作用の結果、第二次性徴、生理周期、妊娠、更年期障害などと関係しています。卵巣機能の異常は内科だけでなく、産婦人科とも協力して疾患の診断、治療にあたります。